最判H.16.9.10
決裁の手続が予定されている文書を作成する基礎となった文書が,同決裁手続の終了により,公文書公開条例が
公開の対象として定める
決裁等の手続が終了した文書に当たるとされた事例
福井県カラ出張、非開示処分取り消し 最高裁
(朝日新聞 asahi.com)
福井県職員のカラ出張問題をめぐり、内部調査の中で課などがまとめた文書を県が開示しなかったことの取り消しを市民団体のメンバーが求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(津野修裁判長)は10日、原告敗訴の二審判決を破棄し、県の非開示処分を取り消した。県側の逆転敗訴が確定した。同小法廷は「県は外部に調査報告書を公表しているが、その基礎となった調査過程の取りまとめ文書もこれと同視し、開示の対象とすべきだ」と認定した。
同小法廷は開示する公文書の範囲について、条例の規定のみで形式的に判断せず、柔軟に対応するよう求めた。報告書のもとになった文書を条例の公開対象とした判断は注目され、情報公開を求める動きに影響を与えそうだ。
福井県公文書公開条例は「公文書」について「決裁または供覧の手続き終了後、県が管理するもの」と規定。このため、一、二審判決は調査過程の取りまとめ文書は公文書には当たらないとして請求を退けていた。
これに対して同小法廷は、県の各部局が旅費をめぐる不適切な支出を整理、集計した取りまとめ文書について「県の調査委が作成し、決裁終了後に公表された報告書の基礎になったものだ」と指摘。「取りまとめ文書自体に決裁などの手続きが予定されているかどうかはともかく、決裁対象である報告書と同視すべきで、公開の対象となる文書に当たる」と結論付けた。
原告側が開示を求めていた帳簿、ノート類、預金通帳については「理由を記載した書面が提出されていない」として上告を却下した。
福井県職員のカラ出張は97年に発覚。同県が庁内に設けた調査委員会の調べで、94~97年度に備品購入や職員の飲食代に使うため約21億6000万円の裏金が作られたとされる。
この問題をめぐり、市民オンブズマン福井が99年、公文書公開条例に基づき、県の各部局が内部調査の中で実際の支出目的や金額などを取りまとめた文書などを公開請求した。しかし、同県は条例が決裁や供覧を終えた文書を「公文書」と規定していたことをとらえ、請求があった文書は公文書には当たらないとし、「不存在」と回答した。
福井県は00年、条例を改正し、決裁・供覧を経た公文書だけを公開するとする条項を削除している。
(朝日新聞 asahi.com 09/10 12:37)