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ライフログ
最判H.17.01.26 <都国籍条項訴訟> - 憲法 - 外国人の公務就任権
都国籍条項訴訟: 「受験拒否は合憲」 最高裁が逆転判決
 日本国籍がないことを理由に東京都の管理職試験の受験を拒否された在日韓国人で都職員の保健師、鄭香均(チョンヒャンギュン)さん(54)が、都に200万円の賠償などを求めた訴訟の上告審判決が26日、最高裁大法廷(裁判長・町田顕長官)であった。判決は「受験の拒否は法の下の平等を定めた憲法に反しない」と初の合憲判断を示し、都に40万円の支払いを命じた東京高裁判決(97年11月)を破棄して、原告の請求を棄却する逆転判決を言い渡した。原告の敗訴が確定した。

 主な争点は、管理職試験の受験を拒否した都の措置が(1)法の下の平等(憲法14条)(2)職業選択の自由(同22条)--に反するか。高裁判決は「意思形成に参加する管理職もあるが、そうでない管理職もある」としたうえで、「憲法は前者の管理職への外国人の就任権を保障していないが、後者については保障が及ぶのだから、一切の昇進の機会を奪った都の措置は違憲」と述べた。

 都側は上告審で「憲法の規定が外国人に及ぶとした2審は解釈を誤っているし(2審の解釈を前提にしても)都には意思形成に参加しない管理職は存在しないのだから都の措置は適法」と主張。原告側は「憲法が外国人の公務就任を一切認めていないと解釈するのは誤り。外国人にも憲法の保障は及ぶので、上告は棄却されるべきだ」と反論していた。【小林直】

毎日新聞 2005年1月26日 15時39分


最高裁 平成17年01月26日 大法廷判決
平成10年(行ツ)第93号 管理職選考受験資格確認等請求事件


要旨:

1 地方公共団体が,公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員の職を包含する一体的な管理職の任用制度を設け,日本国民に限って管理職に昇任することができることとすることは,労働基準法3条,憲法14条1項に違反しない

2 東京都が,管理職に昇任すれば公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員に就任することがあることを前提とする一体的な管理職の任用制度を設け,日本の国籍を有することをその昇任の資格要件としたことは,労働基準法3条,憲法14条1項に違反しない


理由(抜粋):

(1)
地方公務員法は,一般職の地方公務員(以下「職員」という。)に本邦に在留する外国人(以下「在留外国人」という。)を任命することができるかどうかについて明文の規定を置いていないが(同法19条1項参照),普通地方公共団体が,法による制限の下で,条例,人事委員会規則等の定めるところにより職員に在留外国人を任命することを禁止するものではない。

普通地方公共団体は,職員に採用した在留外国人について,国籍を理由として,給与,勤務時間その他の勤務条件につき差別的取扱いをしてはならないものとされており(労働基準法3条,112条,地方公務員法58条3項),地方公務員法24条6項に基づく給与に関する条例で定められる昇格(給料表の上位の職務の級への変更)等も上記の勤務条件に含まれるものというべきである。

しかし,上記の定めは,普通地方公共団体が職員に採用した在留外国人の処遇につき合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることまで許されないとするものではない。

また,そのような取扱いは,合理的な理由に基づくものである限り,憲法14条1項に違反するものでもない。

 管理職への昇任は,昇格等を伴うのが通例であるから,在留外国人を職員に採用するに当たって管理職への昇任を前提としない条件の下でのみ就任を認めることとする場合には,そのように取り扱うことにつき合理的な理由が存在することが必要である。


(2)
地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするもの(以下「公権力行使等地方公務員」という。)については,次のように解するのが相当である。

すなわち,公権力行使等地方公務員の職務の遂行は,住民の権利義務や法的地位の内容を定め,あるいはこれらに事実上大きな影響を及ぼすなど,住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものである。

それゆえ,国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条,15条1項参照)に照らし,原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり,我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。

 そして,普通地方公共団体が,公務員制度を構築するに当たって,公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも,その判断により行うことができるものというべきである。

そうすると,普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法14条1項にも違反するものではないと解するのが相当である。

そして,この理は,前記の特別永住者についても異なるものではない。


<個人的コメント>

原審の高裁判決や学説が、就任可能な職種と不可能な職種を丁寧に分類して判断をしていたのに、なぜ、形式的に一律に不可、とするのか、理解に苦しむ。

鶏を割くにいずくんぞ牛刀を用いん。

最近、このような、判決が多すぎるように思う。

精密な実質的判断を放棄して、形式的になり過ぎているのではないか。

たしかに、規範がシンプルであれば、判断のミスも少なくなるし、裁判官の個性の違いによる判決のばらつきも防げよう。
一律、公平で訴訟の効率化、スピードアップにつながろう。

しかし、そればかりでいいのか。

判決による司法の救済を受けるべき人々を無視して、行政もとい司法の効率ばかり追求していてよいのか?

現在の潮流は、司法の本末転倒ではないのか・・・?

なお、わたしは、必ずしも外国人の人権ばかりを主張したいわけではない。
外国の日本の政策への不当な干渉や、スパイ行為は、心底、ごめんこうむりたい。

ただ、司法のあまりに形式的な態度に疑問を持っているだけである。


<参考文献など>
芦部 p.90-1
有斐閣Ⅰ p.211-3
最判H.07.02.28 (憲法判例百選Ⅰ- 5事件)
択一過去問 H.16-16


P.S.
shinobi.jp のアクセス解析によると、どうやら、この記事に、アダルト系サイトから、自動ジャンプするリンク設定が無断で貼られてしまったようだ。
そのサイトの管理者がどのような意図でこのようなことをしたのか全く不明である。

断っておきたいのは、わたしはそのサイトとは、断じて、一切、関係がない。
そのようなサイトから、こちらに誘導する意図をわたしが持っていることなど、あり得ないことは言うまでもない。

ともかく、そのサイトから、こちらに来られた方は、期待と異なる記事で、さぞ、がっかりされたことでしょう。
ご期待にそえずに、申し訳ない。

しかし、訪問されてきたあなたと同様、わたしも、そのサイトのおかげで、非常に困惑しているところです。

どうか、誤解のなきよう、よろしくお願いいたします。
by Wolfgang_A | 2005-01-26 19:03 |   判例 (司法試験)
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